シャンティ老師の清談録 ~第五話~
さて、今日の清談はどのようなお話がよろしいですかな。 つまるところ、“音楽が何なのか”という問いに結論はなく、いつ始まったのかすらわかりません。
倍音<音の子供>
先日は、音と人の在り方についてお話しいたしました。
きっと宇宙ができたとき、ビッグバンと同時にはじまったのかもしれませんなぁ。
ところで。皆さんは、実は音は出産している、なんてお話を聞いたことはございますか?
そうですなぁ。今日は、“音の摂理”に関してお話いたしましょうか。
子供を生むことができる、というわけですな。 例えばドレミのドの音を出しますと、倍音という摂理どおり、同時に一オクターブ上のド、ソ、ド、ミ、ソ、シ♭という具合に、他の音を生み出します。つまり、子どもをどんどん作るのですね。 ドの第一子、つまり一つ目の倍音がソ。 さて、すると、次のような第一子たちが並んででてきます。 ド ソ レ ラ ミ シ ファ♯ ド♯ ソ♯(ラ♭) ミ♭ シ♭ ファ そして、またドに戻ってきます。どうです。これで12種類の第一子だけがそろい、最後にはまたドに戻ってくるのでございますよ。 ホーキング博士によればふくれ続ける宇宙は、最後には縮んでしまうそうです。 そうそう、最後に最近病院で目にした光景をお話しましょう。
結論から言うと、音というのは出産能力がございます。
しかも、私たちや他の生物のように妊娠期間もなく、すぐさま子供を生んでおります。
彼らに必要なのは、彼らにとっての子宮、つまり音が生み出される環境です。
たとえば、空気のあるところ……そうですなぁ、部屋の中や、楽器で言えば共鳴するためのボックスですかな。二胡でいうと、胴の部分である共鳴胴「琴筒(チントン)でございます。
この条件がそろえば、音は瞬時に出産いたします。
音は多産系でして、一度に複数の子供を生みます。
これを、音楽専門用語で、倍音と呼びます。
耳の鋭い方でしたら約16種類の音まで聞き取ることができます。
通常の方でもその一番目の子供であるであるソの音を聞くことはできます。
ではここで、それぞれの音を親として、第一子の子供だけを生み出してみましょう。
ソの第一子、一つ目の倍音がレ。
そして、レの第一子、一つ目の倍音がラ。
アインシュタイン先生の相対性理論でも、また仏教で言う輪廻転生(うまれかわり)でもありませんが、音はそのルールとして、いつでも元の音に戻る宿命をもっているのでございます。
ひょっとしたら人間もこの摂理のなかで生きて、あるいは生かされているかもしれませんなぁ。
金持ちになりすぎた人は最後には必ず貧乏になるそうです。
亡くなってしまえば、財産すべてをこの世に残したままお墓に入らなければなりません。裸ですから、貧乏ということになりますなぁ。
私がある病院を訪れたとき、ここは老人ホームのようなところでございますが、ある患者さんと思われる女性が、ナースステーションのカウンターの上に小さなラジカセを置いて、うっとりしながらテープから流れてくる民謡を聴いておりました。
ええ、このナースステーションのナースたちの心遣いを感じましたなぁ。
心あたたまる光景でした。
ですが、もう少し欲を言ってしまえば、音楽を聴く場所を用意してあげ、音楽を聴くための機械をそろえれば、病気も早く治るでしょうし、ナースたちやドクターたちの労働も軽減されるのではないかな、と老婆心ながらにも思ったしだいでございます。
………と、まぁ、今日の談話はいかがでしたかな。
次回の清談は、また火曜日にお待ちしております。
それでは、再見。
シャンティ老師
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